要介護1について
高齢者が身の回りの日常生活を一人で行うことが難しくなったとき、介護保険による介護保険サービスを受けることができます。介護認定の調査を市区町村に申請することで、担当の職員が自宅まで面談に来てくれ、その面談を元にして要介護認定の区分が行われます。
しかしほとんどの人は、「判定の結果は要介護1です」と伝えられても、「要介護1ってどんな状態なの?」「明日からなにが変わるの?」と訳が分からなくなってしまうと思います。
今回は、要介護1の身体状態や利用できる介護サービス、また日常生活面での注意点などを分かりやすく解説します。
要介護1の具体的な身体状態について
要介護状態の中では最も軽度とされる要介護1ですが、具体的にはどのような身体状態を指すのでしょうか?ここでは要支援との違いや日常生活での注意点について触れていきたいと思います。
要介護1の具体的な身体状態
要介護1の身体状態を知るうえで、一つの基準となる考え方は以下の通りです。
・身だしなみやお掃除などの身のまわりの世話に何らかの介助(見守りや手助け)が必要。
・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に手すりや支えなどの介助が必要。
・歩行の際に杖や手すりなどの支えを必要とする場合がある。
・排泄や食事はほとんど自分ひとりで行うことができる。
・ときおり混乱や理解力の低下がみられることがある。
・服薬や一人で買い物に出かけるなどの複雑な動作に介助(見守りや手助け)が必要
少し抽象的でイメージしづらい部分もあるかと思いますが、簡潔にいうと、適切な環境や声掛け、手助け程度の軽介助があれば、一人で日常生活を送ることが出来る状態です。
要支援と要介護の違い
要支援と要介護の違いを分かりやすく説明すると、要支援者は入浴や買い物などの動作を一人で行うことはできるが、例えば自分で背中を洗うことができなかったり、動作自体に長い時間がかかってしまったりなど、今後要介護状態になる可能性が高いので、今のうちから介護サービスを利用しながら支援していきましょうという状態です。要介護状態に比べるとできることが多く、見守りがあれば一人でも生活できる状態をさします。
また介護サービスを利用できる限度額が、要支援に比べると要介護1の方が多くなります。限度額に関してはこのあとに紹介します。
要介護1の日常生活での注意点
要介護1の状態は日常生活の送り方次第では、この先、状態が重くもなるし、逆に軽くなる可能性もある重要な時期になります。例えば、少しの介助があればまだまだ一人できることが沢山あるにもかかわらず、動作が遅いからといって不要な手助けをしてしまう。草むしりやお散歩など、危険という理由でなにもさせないように押さえつけるなど、行動の抑制や本人のやる気を奪う否定的な押し付けが、身体状態や認知症を加速させる大きな原因に繋がります。確かに介護者からすれば、危険というリスクがついてまわる大変な時期なのは間違いありませんが、本人のできることを奪い過ぎないような程よい距離感を保ちながら介護にあたるということが重要になってきます。
介護保険の利用限度額
要介護が認定されるとデイサービスなどの介護サービスを利用することができます。利用できる介護サービスの限度支給額は介護度に応じて異なり、要介護1の場合は16万6920円と定められています。このうち利用者の支払額は自己負担額の1割(ただし一部の高所得高齢者は2~3割負担)になります。
注意しなくてはならないのが、ひと月の介護サービスの利用額が限度支給額を上回ってしまった場合は、オーバーした分の費用は全額自己負担になってしまいます。介護サービスの利用回数に関しては、支給限度額をオーバーしないように、担当の介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談しながら調整してみてください。
要介護1で利用できる介護サービス
自宅で生活している要介護者が利用できる介護サービスにはさまざまな種類があります。
今回は沢山ある介護サービスの中から、特に代表的なサービスをご紹介します。
訪問介護(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排せつ、衣服の着替えなどの身体介護や掃除、洗濯、買い物などの生活援助を行います。
デイサービス(通所介護)
日帰りで通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けることができます。
デイケア(通所リハビリテーション)
日帰りで通い、リハビリテーションを受けることができるサービスです。
ショートステイ(短期入所生活介護)
短期間でお泊りができ、食事や入浴、排せつの介護を受けることができるサービスです。
小規模多機能型居宅介護
一つの施設で、デイサービスとホームヘルプとショートステイの3つのサービスを受けることが出来るサービスです。
福祉用具レンタル
福祉用具を介護保険が適用された価格でレンタル・購入できるサービスです。
介護リフォームによる住宅改修費の支給
段差の改修や手すりの取り付けなど、自宅で安全に暮らすための住宅改修工事を介護保険から支給するサービスです。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、原則要介護3以上からの入所となります。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護は、認知症診断を受けた要介護1以上の方で、事業所と同じ市町村に住んでいる方が対象となります。
まとめ
要介護の認定をうけても、周囲のサポートや介護サービスを上手に活用することができれば、自宅で生活を続けていくことは不可能ではありません。少子高齢化がますます進む中で今もっとも大切なことは、介護に対する正しい知識と心構えをもち、介護保険を活用しながら家族や親戚など周りの人たちと互いに協力し合って生きていくことだと思います。もし介護のことで少しでも悩んでいる人がいたら、どうか自分一人で解決しようとはせず、まずは身近な人に聞いてみたり相談してみることから始めてみてください。